余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
最近の希は常にそんな調子だった。


絵を描くことに関してスランプにはまっているようで、実際希が描いた絵を見ると線がブレていたり、物の輪郭を正確に再現できていなかったりしている。


希はそのことで一ヶ月ほど前から悩んでいた。


「そっか。でもそれを抜けるとまた描けるようになるからきっと大丈夫だよ」


萌は確信を持ってそう言った。


萌自身も今まで何度となく描けないときがあった。


そのたびにもう絵を描くことなんてやめてしまおうかと悩んできた。


そんなときに希は常に隣にいてくれて、励ましてくれていたのだ。


その御蔭でもう少しだけ頑張ってみようとチャレンジし、いつの間にかスランプを抜けていたことも多々ある。


だからこそ、少し苦しい期間があったからと言ってそれを安易に手放してしまうのは勿体ないことなのだとわかっていた。


なにより、スランプを抜けた後には成長が待っている。


自分では気がついていなくても、目の前の壁を少しずつ登っていくことができているのだと実感できる。


「あれ、大樹？」
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