余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
「だよね。でも話せないときは電話とか、メッセージとかかなぁ」


「あ、メッセージとか手紙はやめたほうがいいかも」


「どうして?」


萌はつい身を乗り出して聞いていた。


ついさっき希宛に書いた手紙はカバンの中に大切にしまってある。


「文字だと相手の顔が見えないし、下手したら勘違いされちゃうときもあるよ? 言葉のイントネーションとかで伝えることができないから」


「そっか……」


確かに、相手の表情を見ることができないと、どういう気持でそれを書いたのか伝わりにくくなる。


読んでくれた希がどんな表情をしているのかも、こちらには伝わってこないことになるのだ。


手紙はダメか……。


せっかく書いたけれど、あれは出すことができないかもしれない。


萌はどうすればいいかわからず、焦燥にかられるばかりだった。
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