余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
捨てる
放課後、萌は昇降口までやってきてしばらくそこから動くことができなかった。


さっきから希の靴の前を行ったり来たりしている。


希は今日も部活動に参加しているから、まだ学校内に残っていた。


萌は部活の絵を自宅に持ち帰って続きを創作する予定になっていた。


この前のように部室でひとりでいるときに倒れたりしないように、配慮されてのことだった。


あの大好きな空間にいることができないのは少し悲しかったけれど、部室内で使っていた物はすべて借りて帰って使っても良いことになり、それはせめてもの救いだった。


「どうしよう」


つぶやく萌の手の中にはピンク色の封筒があった。


友人らにはああ言われたけれど、どうしても早く気持ちを伝えておきたい。


なにせ自分にはもう時間があまり残されていないのだ。


これを希に読んでもらうことで本当に仲直りができるだろうか。


それとも、今よりももっと深い溝ができてしまうだろうか。


考えてもわからない。


やってみるしかないことはたしかだった。


勇気を出して希の靴の前に立ち、手紙を入れようと手をのばす。


手紙を望みの机の上に置こうとしたそのときだった。
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