余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
☆☆☆

萌の両親が駆けつけてきたのはそれから30分後のことだった。


ふたりとも途中で仕事を抜け出してきてくれて、息が切れていた。


「萌、大丈夫か?」


「うん。今は落ち着いたから大丈夫だよ」


そう答えたとき、自分の声が元に戻っていることに気がついた。


胸の痛みも息苦しさも今は感じなくて、学校での異変がまるで嘘のようだ。


「学校、あんまり無理しないほうがいいんじゃないの?」


母親の言葉に萌は一瞬返事に詰まった。


学校へ行く頻度を減らしたりとか、行くのをやめたらどうかと言われているのだ。


確かに、ずっと病院に居たほうが両親としても安心だし、学校側としても無理がないことを萌も理解している。


自分がいつもどおりの生活をしていることで周りに大きな迷惑をかけているのだ。


病人は病人らしく、静養していればいい。


そんな言葉が脳裏に浮かんできて、下唇を噛み締めた。


「もう少しだけ学校に行きたい」


みんなに迷惑をかけることはわかっている。


けれど、絞り出すような声で萌は気持ちを告げた。
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