余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
萌は目を開けて星空を見上げた。


せめて、この星空を共有することくらいは許されるだろう。


そう思い、ゆっくりとスマホを操作する。


《萌:星空が綺麗だよ》


伝えたいことは他にも沢山あった。


だけど今はこれだけ伝えることで精一杯だった。


時刻はとっくに真夜中に差し掛かっていて、大樹が起きているとも限らない。


しかし、萌のメッセージにはすぐに既読がついて、その瞬間心臓がドクンッと跳ねた。


《大樹:今外を見たよ。めっちゃ綺麗だな!》


今この瞬間、自分たちはつながっているように感じられた。


自分は病院から、大樹は家から。


こうしてつながることは簡単なんじゃないだろうかという期待が湧いてきてしまった。


《大樹:まだ寝てないのか? 体、苦しいのか?》


続けて送られてきた文面を見て、そう言えば苦しさがすっかり抜けていることに気がついた。


大樹が帰ったあとからは酸素マスクもつけていない。


《萌:今はとても調子がいいから大丈夫だよ》


《大樹:そっか、よかったぁ!》


笑顔のスタンプ付きのメッセージに心が穏やかになっていくのを感じる。
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