余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
昨日のことを見られてただなんて!


どこからどこまで見られていたんだろう?


だって昨日は告白どころか、キスまでしちゃってる!


慌てて左右に首をふってなんにもないと説明するけれど、彼女たちは全く信じてくれない。


それどころか「どうして嘘つくの?」「教えてくれたっていいじゃん」と、少し気分を害した様子だ。


どうしよう。


こんなことになるなんて思ってなかった!


とにかく彼女たちから逃げるために、萌は「トイレ」と一言言って席を立った。


大樹の人気ぶりは想像以上のようで、彼女たちはトイレまで追いかけてこようとした。


「ふぅ~……」


どうにか振り切って個室に鍵をかけて非難した萌は大きく息を吐き出した。


もしかして彼女たちは大樹のファンだったんだろうか?


あんな子たちが何人いるんだろう?


それは考えたことがなかったので、ついしかめっ面になってしまう。


病状が安定していて、初めての恋愛を経験して浮かれている場合じゃないのかも。
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