余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
しっかりと気を引き締めておかないと、これから先なにが待ち受けているかわからない。


そう思い、気を取り直してトイレから出た。


そっと廊下を覗いてみると、すでに彼女たちは教室へ戻っているようだ。


ホッと胸をなでおろして自分も教室へ向かう。


そしてドアを開けた瞬間、みんなの会話が止まったのを感じた。


ついさっきまでとは明らかに違う、冷たい雰囲気を肌で感じて背筋が寒くなった。


みんなどうしたんだろう。


なにがあったんだろう。


疑問に感じても質問する勇気もなく、無言で自分の席へと向かう。


そして希の席の前を通ったときだった。


「泥棒猫」


ボソリと発せられた言葉に萌の足が止まる。


希へ視線を向けると、その目は鋭くこちらを睨みつけていた。


「大樹を紹介するんじゃなかった」


続けて言われた言葉に萌はすべてを理解した。


急に希の態度が冷たくなった原因もすべてここにあったんだ。


「あ……」


でも、なにも言えなかった。
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