余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
なにか言わなきゃいけないと思うのに、喉の奥に言葉が引っかかって出てこない。


全身から冷や汗が流れ出している。


希が萌に冷たくなったのは、萌が大樹と仲良くなり始めた頃からだった。


つまり、希は大樹のことが好き……。


それもふたりは幼馴染だ。


いつから希が片思いしていたのか、萌は知らない。


「わ、私は――!」


「親友を裏切るとか最低」


ようやく声が出たと思った言葉が、他のクラスメートによって安易に遮られてしまった。


再び言葉が引っ込んでしまう。


教室の中を見回すとみんなが萌のことを見ていた。


好奇心からニヤついている目。


敵意を剥き出しにして睨みつけている目。


見てみぬふりをして知らん顔をしている目……。


「希、違うの、私っ」


「あんたなんか親友じゃない!」


希の叫び声に教室中は静まり返る。


そしてクスクスと萌をあざ笑うような笑い声が響き始めて、萌はたまらず教室を飛び出してしまったのだった。
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