余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
大樹の部活が休みだったので、珍しく萌とふたりで肩を並べて帰っていたときのことだった。


「なんでそんなこと聞くんだよ?」


「だって、今までそんなこと1度もなかったじゃん」


そう言うと大樹は少し迷ったように視線をさまよわせ、そして口を開いた。


「実は萌の担任と連絡を取り合ってるんだ」


「え?」


初耳で、萌は目を見開く。


大樹と担任教師が連絡先を交換したのは、萌が2度めに倒れたときだった。


あのとき萌が目覚めたときには担任教師はすでにいなくなっていたけれど、大樹はしばらく担任とふたりで病室にいたのだ。


そのときに『福永のことを気にかけてやってくれ』と頼まれたらしい。


そんなの頼まれなくても当然だと答えた大樹に、担任は連絡交換を提案してきた。


『学校内で福永になにかあったときに、連絡を取り合うことにしよう』


大樹はそれを承諾した。


萌のことを少しでも救うことができるのなら、それくらいのことお安い御用だった。


そして最近萌の担任は教室内での異変に気がついていて、大樹に連絡をしてきていたのだ。


「クラスでなにがあったんだ?」


自分が萌のクラスに行くことで萌が孤立することはなくなっている。


けれど、それは根本的な解決にはならなかった。


「ううん、なにもないよ」


そう答える萌の視線は揺れている。
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