余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
☆☆☆

萌を家まで送り届けた大樹はその足でバスに乗り、大学病院へと向かった。


街で一番大きなその病院には今日も沢山の人たちが出入りしている。


患者や医師、学生、お見舞いにきた家族。


性別年齢関係なく入り乱れる人混みをかき分けて、大樹は大学の中に足を踏み入れた。


病院の中に入ると爽やかで清潔感のある匂いが漂っていて、安心する。


本来よくある消毒液の匂いはどこからも漂ってこなかった。


清潔を保たれている廊下を歩くとキュッキュッと音が鳴り、大樹はそのままある一室へと向かった。


軽くノックをすると中から「はい」と、男の声が聞こえてくる。


「兄貴、入っていいか?」


声をかけると中からガタガタ物音がして、しばらくそこで待っているとドアが開いた。


中から出てきたのは大樹そっくりの長身の男で、白衣を着ている。


「大樹、どうしたんだよ」


大きな目を更に大きく見開いて大樹を見つめるその人の胸元には高野というネームがつけられていた。


「ちょっと、相談があって」


「もしかして、萌ちゃんのことか?」


すでに萌の存在を知っているようで、大樹へ向けてそう聞く。


大樹は無言で頷いた。


兄は小さくため息を吐きだすと、大樹を部屋の中へ招き入れたのだった。
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