余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
☆☆☆

兄が使っている部屋は個室になっていて、ちょっとした課題をしたり論文を書いたりする時に使われているようだった。


今は兄以外に誰もいない。


兄は大樹にソファを勧めて、濃いめのコーヒーを二人分作って戻ってきた。


壁際に置かれている机の上にはプリントや専門書が散乱していて、兄が今まで熱心に勉強していたことが伺えた。


「それで、話って?」


無駄に苦いコーヒーをうまそうに一口飲んで兄が聞く。


大樹はコーヒーには手をつけなかった。


「萌の病気のことなんだけど」


「それについては前も説明したはずだぞ」


萌の病気をどうしても治してやりたいと考えている大樹は、勝手に兄に相談をもちかけていたのだ。


しかし、兄からの返事は非常なものだった。


「もう、誰の手にも負えないはずだ」


今回も、真剣な表情で大樹へ向けてそう言った。
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