余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
それはどうしても受け入れるしかない現実で、今の医学ではどうがんばっても萌を救うことはできない。


「どうしても? なんとかならないか?」


大樹はは食いつくように身を乗り出す。


「なんとかなってるなら、担当医だってとっくに動いてるだろ」


「でも! 今日新薬ができて萌が助かるとか!」


ほとんど荒唐無稽に近い出来事を願っている大樹に、兄の目が揺れた。


こんなに必死で他人のことを考えている大樹を初めて見たかもしれない。


「新薬は確かに毎日研究されている。だけど、そう簡単に出来上がって使えるようになるわけじゃないことは、わかってるよな?」


大樹ももう高校生だ。


それくらいのことは理解していた。


けれど、それでもありえない可能性にかけたいと願ってしまう。


「どうしても、医学の力じゃ無理なのか?」


ソファに身をうずめてうなだれる大樹を見ていると胸が痛む。


しかし、現実はどれだけ頑張っても変わらない。


兄はこの院内でその残酷な現実を毎日目の当たりにしてきた。


「やっぱり、萌を助けられるのは俺しかいないのか」


思いつめたような大樹の言葉に兄は目を見開いた。


「余計なことは考えるなよ。病気も含めて相手の人生だ。それに変更を加えるのは神の領域だ」


「神の領域? それなら医学だって同じだろ? 本来死ぬはずだった人間を生きさせてるじゃないか!」
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