余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
☆☆☆

大樹が毎日教室に来てくれるようになって一週間が経過しようとしていた。


「みんな、おはよう!」


萌は教室へ入ると同時に明るく元気に声をかける。


しかし、それに反応してくれる生徒は今は誰もいなかった。


萌が教室に入って感じるのは冷たい視線。


射るような視線。


憎悪に満ちた視線。


それ以外は嘲笑だった。


クラスで孤立した萌を見て見下し、あざ笑っている生徒たち。


時折「かわいそー」なんて声が聞こえてくるけれど、本気でそう思っている生徒はひとりもいない。


萌は教室内にいることに息苦しさを感じて、カバンを置くとすぐに廊下へ出た。


色々なクラスの生徒が入り混じっている廊下では息苦しさも、孤独を感じることもない。


だけど最近では廊下を歩いているときに突然笑われたり、後ろ指を刺されることが増えてきた。


きっと、萌と同じクラスの生徒たちがなにか吹聴してまわっているんだろう。


『なにかいいたいことがあるの?』


1度だけ、廊下で萌を見て笑っていた生徒にそう声をかけたことがある。


だけどそのときの女子生徒ふたりは『なんのこと?』と、とぼけた顔をしてすぐに逃げていってしまった。
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