余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
☆☆☆

萌の担任は約束通り連絡をしてきてくれた。


しかし萌の意識はまだ戻らず、母親が病院にかけつけてきてくれたことで、学校へ戻ってきていた。


「もう知ってると思うけれど、福永に関してだ」


学校に戻ってきた担任はまず教卓に立ち、難しい表情でクラスを見回した。


しかし福永という名前が出た途端に興味を失ったように窓の外を眺めたり、机に視線を落としたりする。


「福永が体が弱いことはもうわかっているよな?」


その質問に返事をする生徒もいない。


教師にはそんな生徒たちがみんな仮面をかぶった冷たい人形のように見えてならなかった。


クラスメートが3度も学校で倒れているというのに、この無関心さだ。


心がスッと冷えていくような感覚に襲われる。


「みんなも、福永のことを気にかけてやっていてほしい」


最後には萌と一番仲のいい希へ視線を向けて言った。


しかし希はまったくこちらを見ていない。


机の上に置いた手の爪先をいじっている。


「例えば、このクラスで福永がなにかしてしまったんだとしても」


方向性を変えて言葉を続けると、少しだけ希が反応をしめした。
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