余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
☆☆☆

萌の担任が学校に戻ってきたのは、次の授業が始まる直前のことだった。


すぐに自分の教室へ戻ろうとした大樹だったが、険しい表情で自分の受け持つクラスへ向かう先生のことが気になって、こっそり後をついてきた。


クラス内で教卓に立ち、萌のことを話し始める先生。


しかし、生徒たちはみんな一向に関心を示さない。


机の下でこっそりマンガを広げていたり、スマホをいじっている者までいる。


クラスメートが学校で倒れたことになんの興味も持っていないのだ。


更に驚きは希の態度だった。


希と萌はペンケースをお揃いにするほど仲がよかったはずだ。


それなのに、希も他の生徒たちと全く同じだった。


先生の言葉を聞いているのかどうかわからない。


じっと自分の爪をいじっている。


そして希は、先生の話が終わると同時に、つまらない講義を聞いた後のように大きくため息を吐き出したのだった。
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