余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
☆☆☆

このままでは萌が学校に戻って来なくなってしまうかもしれない。


あんな教室には行きたくないと思うのが普通だ。


萌が今まで登校してきていたのは、本当に学校が好きだからに違いない。


放課後になると大樹は部活に参加し、そのまま希のいるクラスの昇降口へと向かった。


靴を確認してみると、希はまだ学校内にいることがわかった。


美術部まで行ってみようかと考えたが、もしすれ違いになっても嫌なので、ここで待つことにした。


下駄箱に残されている靴の数は少なくて、ほとんどの生徒が部活を終えて帰っていることがわかった。


外からは西日が差し込み、午後6時を知らせる街のチャイムが聞こえてくる。


スポーツバッグからハンドタオルを取り出して部活でかいた汗をぬぐったとき、足音が近づいてきた。


それはひとり分の足音で、大樹に気がついて立ち止まった。


「大樹?」


「希、なんか久しぶりだな」


希とは近所だけれど、最近顔を合わせていなかった。


萌に合うために教室へ行った時に姿を見かけるけれど、こうしてふたりで会話することは本当に久しぶりだ。


「どうしたの?」


希は驚いた表情を浮かべているが、頬が少し赤く染まっている。


しかし大樹はそれに気が付かなかった。


「ちょっと話があるんだ。一緒に帰らないか?」


その質問に希はすぐにうなづいたのだった。
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