余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
大樹の声にトゲが混ざる。


自分に向けて怒っているのが理解できたけれど、ここで引くわけにはいかなかった。


きっと大樹は萌のことが好きで、萌も大樹のことが好きで、邪魔者は自分に違いない。


だけど、萌が倒れるたびに大樹は悲しそうな顔になる。


萌に合うために教室へ来ても、その表情はどこか影があるように見えるのだ。


「私は、大樹に笑顔でいてほしいの」


希は本心からの言葉を告げた。


無理に微笑んでいるような光景、もう見たくない。


そしてそれは萌が原因だとわかっていた。


「俺はちゃんと……」


「嘘! いつも無理してるじゃん! 他の誰も気が付かなくても私にはわかるよ?」


希の言葉に大樹は喉の奥に言葉をつまらせた。


本心を言えば希の言う通りだった。


いつ萌が倒れてしまうだろうか。


萌がつらい思いをしていないだろうか。


そんなことばかりを考えてやってきた。


大樹の表情は自然とこわばり、そして笑顔がぎこちなくなっていたのだ。


それは他の人から見れば気が付かないような変化だった。


だけど、ずっと一緒にいてずっと大樹に好意を寄せている希は見抜いていたのだ。


「それでも、俺は萌と一緒にいたいんだ」


真剣な表情でそう伝えると希の心臓は張り裂けてしまいそうだった。
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