契約婚初夜、冷徹警視正の激愛が溢れて抗えない
「え? あの……終わってないって?」
 戸惑いながら柊吾さんを見つめると、彼は私の手を離し、警察官らしいスマートな口調で話しだす。
「実は祖母から話を聞いた後で、あなたのことを調べさせてもらいました。祖母は久世家の人間なので、近づいてお金をせびる輩もいますから」
「久世家……? お金をせびる?」
 小首を傾げて説明を求める私に、彼は私の目をじっと見据えて問う。
「その顔だと祖母が何者か知らないようですね。久世グループと言えばわかりますか?」
 声音は穏やかだが、その眼光は獲物を狙う狼のよう。
 その目にハッとしながらもポツリと呟く。
「久世グループ……」
 その名を聞いて知らない者はいない。
 久世グループは日本を代表するグループ企業で、国内外に金融、鉄道、不動産、電力等の事業を展開している。グループの総売上高は七十兆円を超え、創業者の久世一族は過去に何度か総理大臣を輩出している名家だ。
 うちの父も久世グループの系列の『K商事』で働いている。
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