契約婚初夜、冷徹警視正の激愛が溢れて抗えない
「僕と結婚すれば、莉乃さんももう見合いをせずに済みますよ。それに、ご両親も安心するでしょう?」
 見合いをせずに済む? それは推し活に専念できてラッキー……って、そんな理由で簡単に結婚を決めちゃいけない。
 一瞬、いい話だと思ったけれど、すぐに正気に戻って丁重に断る。
「それはそうですが……私は柊吾さんの結婚相手として相応しくないです」
 家柄も違うし、ルックスだって天と地くらいの差がある。
 私が相手では柊吾さんに申し訳ない。
「祖母があなたを選んだんです。その点は心配いりませんよ。他に不安なことは?」
 見合い相手というよりは心理カウンセラーのような態度で彼が接してくるので、普段誰にも話したことのない本音を口にしてしまった。
「……私、今まで男性とお付き合いしたことがないんです。その……あの……男性と触れ合うのが怖いというか……」
 同じベッドで寝れば、脚の傷跡だって見られてしまう。そしたら絶対に引かれる。
 なるべくオブラートに包んでそう伝えると、彼が優しく微笑んだ。
「夫婦生活はなしで構わないですよ。他にまだ不安はありますか?」
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