契約婚初夜、冷徹警視正の激愛が溢れて抗えない
 レストランを出ると、柊吾さんが頼んでくれたタクシーに乗って、麻布にある家に帰宅する。
 マンサード屋根のお洒落な一軒家が私の家。父が有名商社の役員ということもあって、うちはそれなりに裕福だ。
 バッグから鍵を出して家に入ろうとしたら、背後から誰かにポンと肩を叩かれた。
「莉乃、今日は帰りが遅くない? おじさんたちが心配するよ」
 その声で振り返ると、和也が咎めるような目で私を見ている。
 彼は長谷川和也、二十六歳。隣の家の幼馴染で、現在都内の大学病院で研修医をしている。赤ちゃんの時からの付き合いで、弟のような存在。うちの家族も和也を息子のようにかわいがっているし、互いの家にも頻繁に行き来している。
 長身で髪は黒く、清涼感のあるツーブロックにしている和也は、目鼻立ちが整っていて小さい頃から女の子にモテた。
 頭がよかった彼はどこか人を見下したところがあって、友人を作らず、私にも塩対応で、本ばかり読んでいた。でも、私が和也をかばって脚を負傷してからは、過保護なくらい私に対して優しくなったのだ。
「あれ和也? 帰ってたんだ? なにか用?」
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