契約婚初夜、冷徹警視正の激愛が溢れて抗えない
《謝る必要なんてないですよ。ただ『ありがとう』って言ってくれれば嬉しいです》
 礼儀正しくて、気遣いができる完璧な婚約者。
 きっと両親も彼に会ったら気に入るに違いない。
「柊吾さん、ありがとう」
《では、土曜日に》
 柊吾さんが電話を切ろうとして慌てた。
「あっ……待って」
《ん? どうしました?》
「……ごめんなさい。なんだかもっと柊吾さんの声を聞いていたくて……。あっ、すみません!」
 あ~、柊吾さん忙しいのに、なに言ってるの~!
 ひとりてんぱっていたら、クスクスと彼の笑い声が聞こえた。
《結婚したら、毎日聞けますよ。おやすみなさい、莉乃》
 彼の美声にうっとりする。
「おやすみなさい」
 はにかみながらそう返すと、プチッと通話が切れた後もスマホを握りしめ、電話の余韻に浸っていた。

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