初恋からの卒業
「手?」
こーちゃんに言われるがまま、私が右手を差し出すと。
「はい」
私の手のひらに、こーちゃんがチョコやアメをいくつかのせてくれた。
「環奈、甘いもん好きだろ? 今日生徒から貰ったんだけど、環奈に会ったらあげようと思って。食べずに取っておいたんだ」
「あっ、ありがとう」
わざわざ、私のために貰ったお菓子を食べずに残しておいてくれただなんて。
そんなこと言われたら、嬉しくなっちゃうじゃない。
「わざわざ俺のために、悪かったな。環奈、気をつけて帰れよ。それじゃあ」
こーちゃんは私の頭を軽く撫でると、家へと向かって歩きだす。
……こーちゃん。私、やっぱりあなたのことが好きだよ。
結婚なんてしないで。ずっと私だけのこーちゃんでいて欲しい。
なんて。結婚を控える幼なじみにこんなことを思うのは、いけないことなのだろうか。
冷たい風が、ひゅうと吹きつける。
私はこーちゃんの背中が見えなくなるまで、その場に立ちつくしていた。