初恋からの卒業
「白井がボーッとしてるなんて珍しい。さては今日、誰かに告白するつもりで気が気でない……とか?」
ニヤリと笑った山科くんの視線の先には、机の横に掛けてある私の紙袋。
中身は、今日こーちゃんにあげようと思って買っておいた少しお高めのチョコレート。
今朝遅刻しそうになって慌てていたせいで、間違って学校に持ってきてしまったのだ。
「こ、こ、告白なんて私しないから! もう、山科くん変なこと言わないで!」
「ぷっ。白井ってば、ムキになりすぎ」
山科くんが、クスクスと笑う。
「そ、それは、山科くんが……」
「はいはい。つーか、早くノート持って行かないとやばいんじゃねえの?」
「そうだった!」
私は慌てて教卓へと走っていき、四十冊のノートをまとめて胸の前で抱える。
うわ。これ、思ったよりけっこう重い。
予想外の重さに、身体がよろめいてしまう私。
「ったく、しょうがねぇなぁ」
すると山科くんが、私の横からノートを半分ほど奪うように取ってしまった。
「や、山科くん!?」
「これ、俺も一緒に職員室まで持ってくわ」
「え!?」
「ほら、さっさと行くぞ。早くしないと、休み時間終わってしまう」
「う、うん」
私は、歩き出した山科くんのあとを追った。
* * *
「山科くん、ありがとう」
「いいよ。ちょうど暇だったし」
職員室までノートを持って行ったあと、私は山科くんと並んで廊下を歩いていた。
「山科くんのお陰で助かった。ほんとありがとう」
「白井、マジで感謝してる?」
「そりゃもちろん」
「それじゃあ……さっきのお礼はキスがいいな」
「え!?」
私は思わず、廊下で立ち止まってしまう。