初恋からの卒業
「なーんて、冗談。白井ってすぐ本気にするよな。ほんとお前、からかいがいがあるわ」
「山科くん、ひどい!」
クラスメイトといっても、昨年までは挨拶を交わすくらいで。山科くんとは、特別仲が良いってわけでもなかったのに。
先月末、学校が週一登校になったあたりから、山科くんは私によく絡んでくるようになった。
山科くんは基本優しいけど、突然私にああいう冗談を言ってくるときがあるから困る。
「はは。白井、マジ可愛い」
「そんな思ってもないこと、言わないで」
「俺は……ほんとにそう思ってるんだけどな」
「え?」
「いや、何でもない。からかったお詫びに、これやるよ」
山科くんが、私に個包装のチョコレートをいくつかくれた。
しかもこれ、この前こーちゃんが私にくれたチョコと同じやつだ。
ああ、ダメだ。またこーちゃんのこと、思い出してしまう。
「何があったか知らないけど。それでも食って元気出せ。白井にしょぼくれた顔は似合わねぇよ」
「ありがとう」
私はもらったチョコを、さっそく口へと含む。
「……美味しい」
チョコレートの優しい甘さが口の中いっぱいに広がっていき、自然と口角も上がる。
「だろ? つーか、白井はやっぱり笑顔が一番似合うよ。ほら、もっと食え」
それから山科くんは、学ランのポケットに忍ばせていたというチョコを私に全部くれた。