初恋からの卒業
【こーちゃんへ
かんなは、こーちゃんのことがすき。
これからもずっと、かんなといっしょにいてね!】
こーちゃんが見せてくれた手紙には、ひらがなでそう書かれていた。
そうか。この頃の私は、自分のことを環奈って言ってたんだっけ。
それにしても八歳の私、まさかこーちゃんのことが好きって書いていたなんて。めちゃくちゃ恥ずかしい。
「本当にありがとうな、環奈。俺も、環奈のことが好きだよ。幼なじみとして」
「こーちゃ……っ」
思わず、うるっとしてしまった。
私の初恋は、実らなかったけど。
明日結婚を控えているこーちゃんに、幼なじみとして好きだと言ってもらえて。もうそれで十分だ。
「手紙に書いてくれてたのに。俺、環奈とずっと一緒にいられなくてごめんな」
私は首を横にふる。
「それは八歳の私が書いたことだから。もう時効だよ」
「環奈……」
「私も、幼なじみとしてこーちゃんが好き。だからこーちゃん、絵里さんと幸せになってね。誰よりも私は、こーちゃんの幸せを願ってる」
「ありがとう、環奈」
こーちゃんの目が細められる。
「俺にとって環奈は、ずっと大事な幼なじみだ。結婚してからもずっと、それだけは変わらないから」
「うん。私も一緒だよ。こーちゃん、今までありがとう。こーちゃんが幼なじみで良かった」
「それは、こっちのセリフ」
私とこーちゃんは、微笑み合う。
私、こーちゃんと出会えて良かった。
こーちゃんが私の初恋の人で、本当に良かった。こーちゃん、大好きだったよ。
「引っ越しても、たまには店に遊びに行くよ。これからは、絵里と一緒に」
「うん、待ってるね」