初恋からの卒業
「ありがとう、山科くん。私……」
「うん、分かってる。白井、他に好きな男がいるんだろ? だったら俺のことは、潔く振ってくれ」
山科くんが、私から顔を逸らす。
「ああ、でも。振られるのはやっぱり怖いな」
山科くんはギュッと目を閉じ、両手で自分の耳を塞いでいる。
私はそんな山科くんの腕を優しく掴み、その大きな手のひらを彼の耳からそっと離す。
「ねぇ、山科くん。こっち向いて?」
「え?」
私と山科くんの目が合う。
山科くんって、ほんとに綺麗な目をしている。
「私、こーちゃんからは……初恋からはもう卒業したから」
過去にとらわれず、これからはしっかりと前を向いていきたい。だから……。