初恋からの卒業
こーちゃんと私は、家が近所の幼なじみ。
私が生まれたとき、こーちゃんは五歳で。
兄弟のいないこーちゃんは、私を本当の妹のように可愛がってくれた。
幼い頃からいつも私の隣には、こーちゃんがいてくれたからだろうか。
物心ついた時から私は、こーちゃんのことが好きだった。
こーちゃんと二人でコンビニに行って、私がお菓子二種類で迷っていたらその片方を選んでくれて。
『環奈、はんぶんこ』と言って、いつも分けてくれるような子だった。
ウチの喫茶店がオープンして間もない頃は、店になかなかお客さんが来てくれなくて。
『お前んちの店、いつもガラガラ』『貧乏女ー!』などと、私は小学校の同級生男子たちにからかわれることが多かった。
そんな私のことを、こーちゃんがいつも守ってくれた。
ウチの喫茶店がオープンしてからは、店の奥の席でよく一緒に学校の宿題をし、こーちゃんに勉強を教えてもらったりもした。
こーちゃんは小学生の頃から勉強、特に算数が得意で人に教えるのがとても上手だった。
だから、今の教師の仕事はこーちゃんの適職だと思う。
それにしても、五歳という年齢差は意外と大きい。
私が小学校に入学する頃、こーちゃんは小学六年生で。同じ小学校に通ったのは、たったの一年だけ。
私が中学校を卒業する頃には、こーちゃんはすでにお酒が飲める年齢になっていた。
いつもこーちゃんは私のずっと先を歩いていて、五歳の年齢差が縮まることはなかった。
早く大人になりたくて。こーちゃんの恋愛対象になりたくて。
メイクを頑張ってみたり。“ 大人の女性 ” について、研究してみたり。
こーちゃんに妹ではなく一人の女として見て欲しくて、私なりに努力してきた。
そして先日十八歳になり、お酒はまだ飲めないけれど私もついに成人という年齢になった。
ようやく私もこーちゃんと同じ、大人になれたというのに。これで、こーちゃんに近づけたと思った矢先……。
「結婚、ですか……」