初恋からの卒業


「ごめんね。実習と関係ないことは答えられないんだ」

「えーっ」

にっこりと爽やかに微笑むと、不満そうな表情の女子生徒たちを置いてこーちゃんはさっさと教室を出て行く。


「待って、こーちゃん!」

「あっ、環奈」

私が教室を飛び出してこーちゃんを追いかけると、こーちゃんは足を止め振り向いてくれた。


「こーちゃんが教育実習で高校に来るなんて、聞いてないんだけど」

「そりゃそうだろ。環奈には話してなかったんだから」

こーちゃんの口角が上がる。


「……それで? 環奈、驚いた?」

「それは、もちろん」

「そっか。それじゃあ……」


『環奈へのサプライズ、成功だな』って。


あのときもこーちゃんは、私にそう言ってイタズラが成功した子どもみたいに笑ったんだ。

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