だから聖女はいなくなった
『ごめんなさい』

 サディアスのその言葉に、彼女の手がふと止まる。

『どうしてサディアス様が謝るのですか?』
『兄が、あなたとの約束を破ったわけですよね』

 彼女は「いいえ」と首を横に振る。
 今日のラティアーナは、空色の髪の毛をゆるく三つ編みにしている。そうやって彼女が顔を動かすたびに、三つ編みの先端がしっぽのように揺れた。

『キンバリー様は忙しい方ですから、仕方ありません。それに……こうして待っている間も、わたくしは楽しんでおりましたから』

 彼女の手が動き出す。花を摘み、重ねて、まとめて、わっかになっていく。

『器用ですね』
『これを作ると、子どもたちも喜んでくれるのです』

 そう言って彼女は、最後の花をくるっと止めた。

『できました』

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