だから聖女はいなくなった
「ラティアーナ様は、もう、来られないのですか?」
「ラティアーナ様は聖女をやめられたので。詳しいことは神殿に聞かないとわからないのです」
「そうなのですね」

 彼女の表情は暗くなった。

 なんとも言えない重い気持ちを抱えたまま、サディアスは他の場所へと移動する。厨房ではマザーと子どもたちが夕食の準備に取り掛かっていた。
 保管されている食材をちらりと確認したが、マザー長が言っていた通り、その量が十分ではないように見える。むしろ、キンバリーが寄付をしているのだから、もう少しましな食材を用意できるのではないだろうか。

「状況は、わかりました……」

 あまりにもの現状に、喉の奥がひりひりとした。以前、ラティアーナがまだ聖女であったときに訪れた孤児院は、こんな状況ではなかったはず。

 マザー長は深く頭を下げた。

 外からはにぎやかな子供たちの声が聞こえている。何をしているのかと思って、外に出てみると、力に自信があるような男の子たちが、薪割りをしていた。こういった力仕事は、人を雇っていたはずなのに。

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