だから聖女はいなくなった

4.

 報告のためにキンバリーの執務室へ入ると、彼は笑顔で出迎えてくれた。
 いつものソファ席に深く座る。自覚していなかったが、サディアスも疲れていたらしい。座った途端、全身が重くなったように感じた。
 慣れた場所にきて、気が抜けたのだろう。

「それで、ラティアーナの居場所はわかったのか?」

 侍従がお茶の用意をして姿を消すとすぐに、キンバリーはそう尋ねてきた。

「いえ。孤児院にもいませんでしたし、孤児院でも彼女の居場所を知らないようでした。むしろあれ以降、ラティアーナは孤児院に足を運んでいないようです」

 だからマザーや子どもたちから、ラティアーナのことをたくさん聞かれたのだ。
 あまりにも聞かれ過ぎて、頭が痛くなるほどに。

 こんなときは、甘い物を食べるのがよい。目の前に用意されたチョコレートを一粒つまむ。口の中にはまろやかな甘さが広がり、頭痛をやわらげてくれるような気がした。

「……そうか。いろいろと悪かったな。ありがとう」
「いえ」

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