だから聖女はいなくなった
「神殿へ行き、あの神官長と顔を合わせた時は『よほどいいものを食べているんだろうな』というのが第一印象です。ですが、マザー長からはそんな様子が感じ取れません。今日をやり過ごしたら、明日はどうしようか。そんな気持ちが漂ってくるような、そんな感じです」
「だったら、その寄付金はどこに消えたんだ?」
「だからです。その間で消えたと考えるのが妥当ですよね」
「……チャド・シェパード」
キンバリーは苦し気に一人の男の名を口にした。
「私が、孤児院への寄付金を任せている男は、チャド・シェパードだ。シェパード侯爵の嫡男だから、信用していた」
「孤児院へは、いろいろと確認するために、もう一度足を運ぶつもりです。次は、帳簿を見せてもらおうと思っています。兄上はそのチャド殿を……」
「ああ」
キンバリーは深く頷く。
「兄上。まずは、チャド殿に話を聞いてみてはいかがでしょうか。本当のことを言うかどうかはわかりませんが……」
「そうだな。まずは彼に話を聞いてみることにするよ」
そう言ったキンバリーは悄然とした面持ちであった。気持ちを落ち着かせるかのようにカップに伸ばす指の先が、微かに震えている。その一連の仕草を、サディアスは黙って見ていた。
「だったら、その寄付金はどこに消えたんだ?」
「だからです。その間で消えたと考えるのが妥当ですよね」
「……チャド・シェパード」
キンバリーは苦し気に一人の男の名を口にした。
「私が、孤児院への寄付金を任せている男は、チャド・シェパードだ。シェパード侯爵の嫡男だから、信用していた」
「孤児院へは、いろいろと確認するために、もう一度足を運ぶつもりです。次は、帳簿を見せてもらおうと思っています。兄上はそのチャド殿を……」
「ああ」
キンバリーは深く頷く。
「兄上。まずは、チャド殿に話を聞いてみてはいかがでしょうか。本当のことを言うかどうかはわかりませんが……」
「そうだな。まずは彼に話を聞いてみることにするよ」
そう言ったキンバリーは悄然とした面持ちであった。気持ちを落ち着かせるかのようにカップに伸ばす指の先が、微かに震えている。その一連の仕草を、サディアスは黙って見ていた。