だから聖女はいなくなった
「明日は、雨だから。お屋敷で子どもたちの世話をすればいいのよね?」
「ああ、頼む。ラッティが子どもたちをみてくれるから、サムもアニーも助かってると言ってた」
「子どもは好きなの。とても素直だから」
「それは……俺が素直ではないと言っているみたいだな」
「だって、あなたは子どもではないでしょう?」

 ラッティが見上げて微笑み、カメロンも微笑み返す。
 繋がれた手からは、互いのぬくもりが伝わってくる。



 カメロンとラッティは幼馴染みで、歩けるようになる前から、互いの家を行き来していたような仲だ。というのも、両親の仲が良かったからである。
 特に、ラッティの母親とカメロンの母親は、妊娠と出産の時期が近かったことから、互いに不安や愚痴をこぼし合っていた。

 先にカメロンが産まれ、それから三か月後にラッティが産まれた。けれども、ラッティの母親は産後の肥立ちが悪く、ラッティを産んでから一か月後に亡くなった。
 カメロンの母親は、ラッティの母親の分までラッティの世話をしてくれた。カメロンの家は裕福だったから、ラッティの父親もそれに甘えていた。

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