だから聖女はいなくなった
「サディアス様。村長の屋敷は、あそこです」
一本道の先の小高い丘にある屋敷。その手前には、似たような家が道の両脇に建ち並ぶ。石灰岩で造られた壁に、茶色の三角屋根。田舎にある、心があたたまるような素朴な家。王都にある建物とは雰囲気もがらっと異なる。
その先にある屋敷は、他の建物よりも一際大きくでっぷりとかまえていて、村全体を見下ろすかのように建っていた。
この時間帯は、外にいる人が多い。畑仕事だったり、家畜の世話をしたり。先ほどから、やたらと人の姿が目に入った。だが、サディアスの歩いている道からは遠い場所にいるためか、その人だって指一本分の大きさにしか見えない。
テハーラの村は畜産業が盛んな村である。そんな動物たちの鳴き声が、よりいっそうこの村に穏やかな印象を与えていた。
馬車一台がやっと通れるような道を進み、村長の屋敷に着いた。
侍従が叩き金を叩く。
コツコツ、コツコツ――。
しばらくして扉が開くと、エプロン姿の女性が姿を現した。不審そうにこちらを見ている。
侍従が幾言か声をかけると「旦那様は不在ですので、若旦那様に聞いてまいります」とのことだった。
侍従はその態度に不機嫌そうな表情を見せたが、ただの使用人に判断ができないのは当たり前だろう。それに、サディアスだって身分を隠して訪れている。それを考えれば、この使用人の態度は妥当なのだ。
不機嫌そうな侍従をなだめるため、サディアスが声をかけると、彼はばつが悪そうに顔をしかめた。この状況をすぐに理解したようだ。
一本道の先の小高い丘にある屋敷。その手前には、似たような家が道の両脇に建ち並ぶ。石灰岩で造られた壁に、茶色の三角屋根。田舎にある、心があたたまるような素朴な家。王都にある建物とは雰囲気もがらっと異なる。
その先にある屋敷は、他の建物よりも一際大きくでっぷりとかまえていて、村全体を見下ろすかのように建っていた。
この時間帯は、外にいる人が多い。畑仕事だったり、家畜の世話をしたり。先ほどから、やたらと人の姿が目に入った。だが、サディアスの歩いている道からは遠い場所にいるためか、その人だって指一本分の大きさにしか見えない。
テハーラの村は畜産業が盛んな村である。そんな動物たちの鳴き声が、よりいっそうこの村に穏やかな印象を与えていた。
馬車一台がやっと通れるような道を進み、村長の屋敷に着いた。
侍従が叩き金を叩く。
コツコツ、コツコツ――。
しばらくして扉が開くと、エプロン姿の女性が姿を現した。不審そうにこちらを見ている。
侍従が幾言か声をかけると「旦那様は不在ですので、若旦那様に聞いてまいります」とのことだった。
侍従はその態度に不機嫌そうな表情を見せたが、ただの使用人に判断ができないのは当たり前だろう。それに、サディアスだって身分を隠して訪れている。それを考えれば、この使用人の態度は妥当なのだ。
不機嫌そうな侍従をなだめるため、サディアスが声をかけると、彼はばつが悪そうに顔をしかめた。この状況をすぐに理解したようだ。