だから聖女はいなくなった
 カメロンは笑いつつそう言った
 後ろに控えていた侍従が身体を強張らせたが、サディアスはそれを制した。

「あぁ。言葉足らずで申し訳ありません。牛糞を堆肥にしたという意味です。牛糞を堆肥にして、茶葉を育てます。まぁ、茶葉はこの村では作っていないのですが、牛糞の堆肥をおろしているので。このお茶は隣の町の特産品です」
「なるほど……」

 だが、アイニスにすすめられた隣国のアストロ国のお茶よりは好みかもしれない。
 もう一度カップに手を伸ばして、一口飲む。
 その様子をカメロンにじっくりと見られた。サディアスの訪問を快く思っていない。それだけはひしひしと感じた。
 サディアスがカップを戻すのを見届けてから、カメロンは口を開く。

「話が逸れてしまいました。サディアス様はどういったご用件でこの村に?」

 カメロンがサディアスを試しているようにも見える。

「聖女であったラティアーナ様は、テハーラの村の出身であるとお聞きしたのです。ラティアーナ様にお会いできないでしょうか?」

 カメロンの右目がひくっと動いた。

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