だから聖女はいなくなった
3.
「ラティアーナ様に、兄――キンバリー殿下から伝言がございます。また、ラティアーナ様が足を運んでいた孤児院の子たちから、手紙を預かってきました」
カメロンの表情がふと緩む。
「ですが、この村にラティアーナという者はおりません。残念ですが、その手紙を渡せる相手がいないのです」
先ほどよりも穏やかな口調だ。サディアスに対して、少しは心を開いてくれたのだろうか。
「そうですか……ラティアーナ様はこちらの出身と聞いておりまして。てっきり、聖女を辞められたあとはこちらに戻ってくるものと思っていたのですが……」
行き場を失った手紙が、テーブルの上にぽつんと置かれている。子どもたちの拙い字で、ラティアーナの名前が封筒にしっかりと書かれていた。
「もし、ラティアーナ様がこちらにお戻りになられて、お会いするようなことがあれば、こちらを渡していただいてもよろしいでしょうか?」
「サディアス殿下もなかなか強情な方ですね。残念ながら、こちらにはラティアーナという者に心当たりがないのです。ですから、そちらは殿下のほうから、その方にきちんとお渡しすべきでは?」
「そう、ですか。わかりました。僕がラティアーナ様に出会ったら、お渡しします」
カメロンの表情がふと緩む。
「ですが、この村にラティアーナという者はおりません。残念ですが、その手紙を渡せる相手がいないのです」
先ほどよりも穏やかな口調だ。サディアスに対して、少しは心を開いてくれたのだろうか。
「そうですか……ラティアーナ様はこちらの出身と聞いておりまして。てっきり、聖女を辞められたあとはこちらに戻ってくるものと思っていたのですが……」
行き場を失った手紙が、テーブルの上にぽつんと置かれている。子どもたちの拙い字で、ラティアーナの名前が封筒にしっかりと書かれていた。
「もし、ラティアーナ様がこちらにお戻りになられて、お会いするようなことがあれば、こちらを渡していただいてもよろしいでしょうか?」
「サディアス殿下もなかなか強情な方ですね。残念ながら、こちらにはラティアーナという者に心当たりがないのです。ですから、そちらは殿下のほうから、その方にきちんとお渡しすべきでは?」
「そう、ですか。わかりました。僕がラティアーナ様に出会ったら、お渡しします」