だから聖女はいなくなった
 サディアスは身をかがめて、子どもと視線の高さを合わせた。

「サディアスは王子様みたいにきれいな人ね。わたし、リビー」
「よろしく、リビー」

 サディアスが手を出すと、リビーはにっこりと笑ってその手を握り返した。

「リビー。サディアスはラッティにお話があるそうなんだ。だから、その間、俺と一緒に本を読んでいよう」
「え~。カメロン、ご本の読み方、へたくそなんだもん」
「あら。だったら、リビーがカメロンに本の読み方を教えてあげたらどうかしら? リビーはとっても上手に読むものね」

 久しぶりに聞いた彼女の声。目の前の女性は、間違いなくラティアーナだ。

「しょうがないな、カメロン。リビーが教えてあげる」

 リビーはサディアスの手をぱっと離し、カメロンの手を握った。

「ラッティもサディアスも、牛さんのお話が終わったら、リビーと遊んでね」

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