だから聖女はいなくなった
「ラティアーナがいなくなったからだ……」
まるで胸の奥から絞り出すような、苦しそうな声である。
だが、まさかここで、彼女の名が出てくるとは思わなかった。
「なぜラティアーナ様がいなくなると、兄上の執務が滞るのですか?」
そもそもラティアーナに別れを告げたのはキンバリーのほうだ。彼女はその言葉に素直に従っただけにすぎない。
キンバリーが深く息を吐いた。それでも、書類の山はびくともしない。
サディアスは黙って書類の束を見つめている。正確には、書類の向こう側にいるであろうキンバリーを見ているのだ。
「彼女に手伝ってもらっていた。彼女は神殿にいただけあって、国内の情勢に詳しかった」
閉鎖的なイメージのある神殿であるが、ラティアーナはしっかりと国内、いや国外も含めて目を向けていた。慈善活動の合間には書物を読み、有識人から教えを乞い、くるべき厄災に備えていたのだ。
過去にどのような厄災が訪れたのか。それに対してどのような対応をしたのか。
まるで胸の奥から絞り出すような、苦しそうな声である。
だが、まさかここで、彼女の名が出てくるとは思わなかった。
「なぜラティアーナ様がいなくなると、兄上の執務が滞るのですか?」
そもそもラティアーナに別れを告げたのはキンバリーのほうだ。彼女はその言葉に素直に従っただけにすぎない。
キンバリーが深く息を吐いた。それでも、書類の山はびくともしない。
サディアスは黙って書類の束を見つめている。正確には、書類の向こう側にいるであろうキンバリーを見ているのだ。
「彼女に手伝ってもらっていた。彼女は神殿にいただけあって、国内の情勢に詳しかった」
閉鎖的なイメージのある神殿であるが、ラティアーナはしっかりと国内、いや国外も含めて目を向けていた。慈善活動の合間には書物を読み、有識人から教えを乞い、くるべき厄災に備えていたのだ。
過去にどのような厄災が訪れたのか。それに対してどのような対応をしたのか。