だから聖女はいなくなった
彼女は顔をあげて、真っすぐにサディアスを見つめる。翡翠色の瞳は、キンバリーが婚約破棄を突きつけたときと同じように力強く揺れている。
しかしそう問われると、サディアスも即答できない。キンバリーはラティアーナに謝罪したいと言っていたが、それが何に対する謝罪なのか。目下のところ、婚約破棄に対する謝罪なのだろう。
「パーティーのときの、婚約破棄の件かと……」
「まぁ。キンバリー様はそれを気にしていらっしゃったのですね。あれは、私にとっては僥倖でした。キンバリー様とアイニス様に、感謝を申し上げます」
「ラティアーナ様は……兄を好いていたわけではなかったのですね」
「えぇ。でしたら、こちらに戻ってきてすぐに結婚などしないでしょう? 私はずっと、カメロンのことを想っていました。聖女になったから、キンバリー様と婚約しましたが、できることならその婚約も、そして聖女という役目も投げ出したかった」
サディアスから視線を逸らした彼女は、黙々と花冠を作り続ける。
そんな彼女の姿を見て、胸が痛んだ。
ラティアーナはキンバリーを受け入れていると思っていた。
ラティアーナは聖女という役目に誇りを持っていると思っていた。
けれども、彼女の本音は異なっていた。
しかしそう問われると、サディアスも即答できない。キンバリーはラティアーナに謝罪したいと言っていたが、それが何に対する謝罪なのか。目下のところ、婚約破棄に対する謝罪なのだろう。
「パーティーのときの、婚約破棄の件かと……」
「まぁ。キンバリー様はそれを気にしていらっしゃったのですね。あれは、私にとっては僥倖でした。キンバリー様とアイニス様に、感謝を申し上げます」
「ラティアーナ様は……兄を好いていたわけではなかったのですね」
「えぇ。でしたら、こちらに戻ってきてすぐに結婚などしないでしょう? 私はずっと、カメロンのことを想っていました。聖女になったから、キンバリー様と婚約しましたが、できることならその婚約も、そして聖女という役目も投げ出したかった」
サディアスから視線を逸らした彼女は、黙々と花冠を作り続ける。
そんな彼女の姿を見て、胸が痛んだ。
ラティアーナはキンバリーを受け入れていると思っていた。
ラティアーナは聖女という役目に誇りを持っていると思っていた。
けれども、彼女の本音は異なっていた。