だから聖女はいなくなった
また国を庇護する竜も神殿にいる。その世話をするのも聖女の役目。毎日でなくてもよいが、最低でも数日に一度は竜のうろこを磨く必要があると、ラティアーナは言っていた。
だからキンバリーと婚約が決まっても、神殿で暮らしていたのだ。
それらの合間をぬって王城に足を運んでいた。
だが、彼女に執務まで手伝わせていたとはサディアスは知らなかった。キンバリーもラティアーナも、何も言っていない。
「でしたら、今の兄上の婚約者はアイニス様ではありませんか。彼女に頼んだらどうですか? 彼女は侯爵家の令嬢でしょう? むしろラティアーナ様よりもしっかりと教育を受けているのでは?」
執務席をぐるりと大きく回り、キンバリーの隣に立った。
彼は頭を抱えたまま横に振っている。金色の髪がさらりと揺れ、形の整っているきれいな耳が見え隠れする。その姿すら痛々しく見える。
「あれは、ウィンガ侯爵家の養女だ」
その一言でキンバリーの言いたいことを察した。
「なるほど」
だからキンバリーと婚約が決まっても、神殿で暮らしていたのだ。
それらの合間をぬって王城に足を運んでいた。
だが、彼女に執務まで手伝わせていたとはサディアスは知らなかった。キンバリーもラティアーナも、何も言っていない。
「でしたら、今の兄上の婚約者はアイニス様ではありませんか。彼女に頼んだらどうですか? 彼女は侯爵家の令嬢でしょう? むしろラティアーナ様よりもしっかりと教育を受けているのでは?」
執務席をぐるりと大きく回り、キンバリーの隣に立った。
彼は頭を抱えたまま横に振っている。金色の髪がさらりと揺れ、形の整っているきれいな耳が見え隠れする。その姿すら痛々しく見える。
「あれは、ウィンガ侯爵家の養女だ」
その一言でキンバリーの言いたいことを察した。
「なるほど」