だから聖女はいなくなった
 その結果、ミレイナは参加している女性の一人から熱々の紅茶をかけられた。なぜこのような流れになったのか、ミレイナ自身には心当たりがない。
 彼女たちに言わせると、()()()()()()()が頭にくるらしいのだが、ミレイナにはさっぱりわからない。

 その場にいた侍従や騎士たちが間に入り、それ以上の問題には発展するのを防いだ。
 問題があるとしたら、ミレイナのドレスくらいだろう。いくら質素なドレスといえども、紅茶によって汚れている。その結果、汚れたドレスで、神殿に戻らねばならない。

 ミレイナは軽く息を吐いた。

 聖女は基本的には神殿から出ない。神殿から出るときには、神官が護衛と称して共をする。だが、王城に来る時だけは王城側が護衛と迎えを出していた。

 その日、護衛についてくれたのがユリウスだ。
 神殿には自分のほうから説明すると彼は言った。
 ミレイナには非がなかったことも、こちら側が悪かったことも、すべて説明し謝罪をすると。
 場合によっては、後日、王妃からの謝罪が届くかもしれない。
 だけど、今は王妃が不在で確認できないから、わかり次第連絡すると。
 帰りの馬車の中で、彼はそう伝えてきた。

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