だから聖女はいなくなった
アイニスは、もとは男爵家の娘であった。それももっとさかのぼれば商売人の娘だ。一代で財を築き商売を成功させた彼女の父が、爵位をもらった。
その後、十五歳になったアイニスは、ウィンガ侯爵家の養女となった。その理由も、傾きかけた侯爵家に金の援助を言い出したのが男爵であると噂されている。いや、それは噂ではなくもはや事実だろう。
その過程はどうであれ、最終的にアイニスは、未来の王太子妃の座を手に入れたのだ。
「つまり、アイニス様では力不足だと?」
「みなまで言わすな」
キンバリーは顔をあげない。どうやら図星のようだ。
「そういえば、アイニス様のお姿が見えませんね。彼女はどうされたのですか?」
キンバリーと婚約する前は彼にまとわりついていた彼女も、婚約してからというもの姿を見る機会が減ったように感じる。
「今は、王太子妃となる教育を受けている。侯爵令嬢というのも名ばかりだからな。張りぼての令嬢だったのだよ」
「ですが、ラティアーナ様を捨て、アイニス様を選んだのは兄上でしょう?」
「だから、あの張りぼてに騙されたのだ」
その後、十五歳になったアイニスは、ウィンガ侯爵家の養女となった。その理由も、傾きかけた侯爵家に金の援助を言い出したのが男爵であると噂されている。いや、それは噂ではなくもはや事実だろう。
その過程はどうであれ、最終的にアイニスは、未来の王太子妃の座を手に入れたのだ。
「つまり、アイニス様では力不足だと?」
「みなまで言わすな」
キンバリーは顔をあげない。どうやら図星のようだ。
「そういえば、アイニス様のお姿が見えませんね。彼女はどうされたのですか?」
キンバリーと婚約する前は彼にまとわりついていた彼女も、婚約してからというもの姿を見る機会が減ったように感じる。
「今は、王太子妃となる教育を受けている。侯爵令嬢というのも名ばかりだからな。張りぼての令嬢だったのだよ」
「ですが、ラティアーナ様を捨て、アイニス様を選んだのは兄上でしょう?」
「だから、あの張りぼてに騙されたのだ」