だから聖女はいなくなった
「アイニスもラティアーナが変わってしまったと言っていた。出会ったばかりの頃は謙虚であったのに、日に日に横暴さが増していくと……。きっとそれは、私が神殿に金を出してしまったのが原因なのだろうな……」

 サディアスにはラティアーナからそんな様子が感じ取れなかった。
 彼女が王城に足を運んでも、キンバリーがアイニスと一緒にいるときは邪魔をせずに庭園のいつもの場所に座っていた。花冠を作っていたときもあったが、木に寄り掛かって目を閉じているときもあった。

 わずかながらでも手に入れた自由な時間を、彼女は心静かに過ごしていた。

 そんな彼女に気がついたサディアスは、彼女の隣に座って幾言か言葉を交わした。今思えば、彼女の時間を奪ってしまったのではないだろうかという後悔も押し寄せてくる。それでもサディアスは、彼女と話をしたかった。

 ラティアーナも笑顔で受け入れてくれた。
 彼女は変わっていない。むしろ変わったのは、彼女の周囲ではないだろうか。

「私はアイニスと神官長の言葉を信じ、ラティアーナに婚約破棄を突き付けた」

 そこでキンバリーは、ふぅと息を吐く。

< 27 / 170 >

この作品をシェア

pagetop