だから聖女はいなくなった
解放感溢れる大きな窓から差し込む日差しはやわらかく、穏やかな空気が流れていた。白を基調としてある調度品は品があり、テーブルの足には葉が舞うような装飾が施されている。
少し離れた場所に、キンバリーがつけたのか、侍女たちが姿勢を整えて立っている。ここからでは、彼女たちにまで話し声は聞こえないだろう。
『ラティアーナ様は、南のはずれのテハーラの村の出身なのですか?』
アイニスは灰色の瞳をくりくりと大きく広げた。南のテハーラの村といえば、田舎だ。ただの田舎ではない。ド田舎である。
石造りの可愛らしい家が建ち並び、牛がのんびりと道を歩いているようなところである。
『はい。ご存知かとは思いますが、あそこはとても長閑な場所でして。向こうとこちらの生活の違いに、今でも戸惑うことがあります』
『ラティアーナ様が神殿に入られたのは、十四歳の頃とお聞きしておりますが』
これもイーモンから聞いた情報である。
イーモンはどこからともなくラティアーナの情報を手に入れていた。いつ頃神殿にやってきたのか。どこの出身か。
表面的な内容であるため、どうして? という部分はまったくわからない。それはイーモンの力をもってしても、調べられなかったようだ。
『はい。突然、あのような辺鄙なところに神官たちが来られまして。聖女の素質があるとのことで、こちらに参りました』
少し離れた場所に、キンバリーがつけたのか、侍女たちが姿勢を整えて立っている。ここからでは、彼女たちにまで話し声は聞こえないだろう。
『ラティアーナ様は、南のはずれのテハーラの村の出身なのですか?』
アイニスは灰色の瞳をくりくりと大きく広げた。南のテハーラの村といえば、田舎だ。ただの田舎ではない。ド田舎である。
石造りの可愛らしい家が建ち並び、牛がのんびりと道を歩いているようなところである。
『はい。ご存知かとは思いますが、あそこはとても長閑な場所でして。向こうとこちらの生活の違いに、今でも戸惑うことがあります』
『ラティアーナ様が神殿に入られたのは、十四歳の頃とお聞きしておりますが』
これもイーモンから聞いた情報である。
イーモンはどこからともなくラティアーナの情報を手に入れていた。いつ頃神殿にやってきたのか。どこの出身か。
表面的な内容であるため、どうして? という部分はまったくわからない。それはイーモンの力をもってしても、調べられなかったようだ。
『はい。突然、あのような辺鄙なところに神官たちが来られまして。聖女の素質があるとのことで、こちらに参りました』