だから聖女はいなくなった
だから今、アイニスは王城のサロンでゆったりとくつろいでいた。
テーブルの上にはティースタンドが置かれている。下段はすっかりとなくなっているが、中段と上段にはまだ菓子が残っていた。
他には誰もいない。ただぼんやりと、彼女はお茶を飲み、菓子に手を伸ばす。
それなのに、彼女の顔には疲労の色が濃く表れている。
「アイニス様……」
サディアスがやわらかく声をかけると、アイニスはゆっくりと顔をあげた。
彼女の顔を見て、ぎくりとする。
あれほど妖しく艶やかであった彼女の顔は、まるで死人のように青ざめている。色めく紺色の瞳も、どことなくくすんで見えた。
華やかなドレスを好む彼女が、灰緑という地味な色合いのドレスを着ているせいもあるのだろう。艶感溢れていた赤い髪も、地味に一つにまとめて三つ編みにしてあるだけ。
キンバリーとの婚約を宣言したときの彼女とは、まるで別人のように見える。
テーブルの上にはティースタンドが置かれている。下段はすっかりとなくなっているが、中段と上段にはまだ菓子が残っていた。
他には誰もいない。ただぼんやりと、彼女はお茶を飲み、菓子に手を伸ばす。
それなのに、彼女の顔には疲労の色が濃く表れている。
「アイニス様……」
サディアスがやわらかく声をかけると、アイニスはゆっくりと顔をあげた。
彼女の顔を見て、ぎくりとする。
あれほど妖しく艶やかであった彼女の顔は、まるで死人のように青ざめている。色めく紺色の瞳も、どことなくくすんで見えた。
華やかなドレスを好む彼女が、灰緑という地味な色合いのドレスを着ているせいもあるのだろう。艶感溢れていた赤い髪も、地味に一つにまとめて三つ編みにしてあるだけ。
キンバリーとの婚約を宣言したときの彼女とは、まるで別人のように見える。