だから聖女はいなくなった
「はい……覚えることはたくさんありますが……」
「神殿のほうにも足を運ばれているのですよね?」
「はい……ああいったことを、ラティアーナ様がやられていたとは、知りませんでした……」
ふと彼女の顔が曇る。
「あのようなこと? 聖女は竜の世話をするとお聞きしているのですが、そうではないのですか?」
「あ、はい……。そうです。竜の世話をしております。竜のうろこを磨かなければなりません。それが、おもっていたよりも大変でして……。竜のうろこが汚れると、庇護を受けているこの国に厄災が訪れるなんて、そんな話を知らなかったのです」
まるで聖女になったことを後悔するような言い草である。
「ですから、必ず三日に一度はうろこを磨かねばならないのです。ですが、竜が……。大きな生き物ですから、ね」
それ以上言ってはいけないと自分を戒めるかのように、不自然なところで言葉を止めた。
カップに手を伸ばして、お茶を一口飲む。その姿すら痛々しい。
キンバリーの横に立ち、婚約者として紹介されたときの妖艶な彼女はどこにいってしまったのだろう。
人とはこれほどまでに変わってしまうのだろうか。
聖女になったのが原因か、キンバリーの婚約者となったのが原因か。
アイニスをしっかりと見つめてみたが、サディアスにはよくわからなかった。
「神殿のほうにも足を運ばれているのですよね?」
「はい……ああいったことを、ラティアーナ様がやられていたとは、知りませんでした……」
ふと彼女の顔が曇る。
「あのようなこと? 聖女は竜の世話をするとお聞きしているのですが、そうではないのですか?」
「あ、はい……。そうです。竜の世話をしております。竜のうろこを磨かなければなりません。それが、おもっていたよりも大変でして……。竜のうろこが汚れると、庇護を受けているこの国に厄災が訪れるなんて、そんな話を知らなかったのです」
まるで聖女になったことを後悔するような言い草である。
「ですから、必ず三日に一度はうろこを磨かねばならないのです。ですが、竜が……。大きな生き物ですから、ね」
それ以上言ってはいけないと自分を戒めるかのように、不自然なところで言葉を止めた。
カップに手を伸ばして、お茶を一口飲む。その姿すら痛々しい。
キンバリーの横に立ち、婚約者として紹介されたときの妖艶な彼女はどこにいってしまったのだろう。
人とはこれほどまでに変わってしまうのだろうか。
聖女になったのが原因か、キンバリーの婚約者となったのが原因か。
アイニスをしっかりと見つめてみたが、サディアスにはよくわからなかった。