だから聖女はいなくなった
「ですが、アイニス様は学園には通われていないですよね?」
「はい。兄が、女は無駄に知識を付けるものではないと、そう言いまして……。教養は身に付けても知識はいらないと」

 なんとなく彼女の兄の人柄が見えてきた。そして、アイニス自身はそれの言いなりだったのだ。

「私は、兄に言われた通り図書館へ通いまして、本を読みました。ですが、やはり本で読むのと人から教えていただくのでは違います」

 それに気づけただけ、彼女を褒めてあげたい気持ちになった。

「そして、突然。兄からウィンガ侯爵……義父を、紹介されたのです」

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