だから聖女はいなくなった
それはキンバリーも言っていたし、サディアスも本人に問うたことでもある。
「はい」
アイニスの問いに頷き、小さく返事をする。
「ラティアーナ様にしては珍しいので、お聞きしたのです。すると、神殿から支給されたものだと言うではありませんか。ですが、私にはピンとくるものがありました。侯爵が……義父が言っていたものですから」
「何を、ですか?」
「キンバリー殿下が、私的に神殿に寄付をしていると。それも、ラティアーナ様のためだと。ですから、キンバリー殿下にも、ついこぼしてしまいました」
そこでアイニスはカップに手を伸ばしたが、先ほど飲み干してしまったことに気づいたのだろう。カップに手をかけて、すぐにあきらめた。行き場を失った右手は、テーブルの上に置かれる。
「ラティアーナ様の素敵なドレスは、殿下からの贈り物なのですねって。羨ましいですわ、と……」
キンバリーの寄付金でラティアーナがドレスを仕立てたと、ウィンガ侯爵がアイニスに伝えたのだろう。それを、ラティアーナのドレスはキンバリーからの贈り物であると、アイニスが解釈したにちがいない。
「はい」
アイニスの問いに頷き、小さく返事をする。
「ラティアーナ様にしては珍しいので、お聞きしたのです。すると、神殿から支給されたものだと言うではありませんか。ですが、私にはピンとくるものがありました。侯爵が……義父が言っていたものですから」
「何を、ですか?」
「キンバリー殿下が、私的に神殿に寄付をしていると。それも、ラティアーナ様のためだと。ですから、キンバリー殿下にも、ついこぼしてしまいました」
そこでアイニスはカップに手を伸ばしたが、先ほど飲み干してしまったことに気づいたのだろう。カップに手をかけて、すぐにあきらめた。行き場を失った右手は、テーブルの上に置かれる。
「ラティアーナ様の素敵なドレスは、殿下からの贈り物なのですねって。羨ましいですわ、と……」
キンバリーの寄付金でラティアーナがドレスを仕立てたと、ウィンガ侯爵がアイニスに伝えたのだろう。それを、ラティアーナのドレスはキンバリーからの贈り物であると、アイニスが解釈したにちがいない。