だから聖女はいなくなった
白い上衣姿の神官長は、サディアスの向かい側にでっぷりと座った。この神官長は肉付きがよく、血色もよい。どのような生活を送っているのか、なんとなく想像ができる。
質素で倹約はどこにいってしまったのか。
案内された応接室だって、派手ではないが、手がかけられているだろうことは見てわかる。
壁に施された細やかな装飾も、天井に描かれている竜の絵も、見事なものだ。それに今サディアスが座っているソファだって、王城と使用しているものと同じくらい豪奢なものだ。
ここにあるものは、どれも質素で倹約なものではない。
「早速ですが。ラティアーナ様に会いたいのですが、居場所はわかりますか?」
彼女の名が出たところで、神官長の顔は曇った。さらに、わざとらしく大きく肩を上下させて息を吐く。
「何をおっしゃるのかと思えば……。ラティアーナの居場所など、我々も知りませんよ。王太子殿下が婚約を解消されたから、彼女はここからいなくなったのです。竜王様が聖女へと望んだのは、アイニスではなくラティアーナであったというのに」
それはまるで、聖女がアイニスでは不安であると言っているようなものだ。
「ですが聖女は、『聖女の証』を持っていればいいのですよね?」
だからラティアーナは、次の聖女としてアイニスに聖女の証を手渡したのだろう。
質素で倹約はどこにいってしまったのか。
案内された応接室だって、派手ではないが、手がかけられているだろうことは見てわかる。
壁に施された細やかな装飾も、天井に描かれている竜の絵も、見事なものだ。それに今サディアスが座っているソファだって、王城と使用しているものと同じくらい豪奢なものだ。
ここにあるものは、どれも質素で倹約なものではない。
「早速ですが。ラティアーナ様に会いたいのですが、居場所はわかりますか?」
彼女の名が出たところで、神官長の顔は曇った。さらに、わざとらしく大きく肩を上下させて息を吐く。
「何をおっしゃるのかと思えば……。ラティアーナの居場所など、我々も知りませんよ。王太子殿下が婚約を解消されたから、彼女はここからいなくなったのです。竜王様が聖女へと望んだのは、アイニスではなくラティアーナであったというのに」
それはまるで、聖女がアイニスでは不安であると言っているようなものだ。
「ですが聖女は、『聖女の証』を持っていればいいのですよね?」
だからラティアーナは、次の聖女としてアイニスに聖女の証を手渡したのだろう。