だから聖女はいなくなった

3.

「サディアス様は、ラティアーナが南のテハーラの村の出身であるのはご存知ですか?」
「ええ。あそこは、とてものんびりとした村のようですね。足を運んだことはありませんが……」

 アイニスから話を聞き、サディアスはテハーラの村についてすぐに調べた。ラティアーナの故郷と知り、この村を調べなければならないと、そう思ったのだ。
 衝動的な気持ちと、義務的な思いからくる行動でもあった。

「ラティアーナを聖女にと望んだのは竜王様です。彼女は、誰よりも聖女に相応しい女性でした。だから、わざわざテハーラの村から、こちらへと来てもらったのです」

 神殿に仕える者は、庇護する竜を竜王様と呼んでいる。その言葉に、サディアスには引っかかるものがあった。
 竜様では響きが寂しいかもしれないが、竜王様と王がつくとニュアンスは異なる。王とは支配する者であったり、同族の中でもっとも優れた者であったりする。となれば、この国を庇護する竜は、竜の中でももっとも優れている竜なのだろうか。とはいえ、この国に竜は神殿にいる竜しかいない。

「我々だって、彼女の両親から彼女をさらってきたわけではないのですよ。きちんと話をして、説得して、名誉あることだと。この国を救えるのはラティアーナだけだと、そう伝えたのです」

 やはりラティアーナは、ここに望まれて聖女になったのだ。

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